商工会議所の次期新体制が、ほぼ固まったようであります。当クラブから会頭ならびに副会頭2人が、就任する予定であります。また、議員になられる方を含めると、当クラブから多くの会員を輩出することになります。大変に名誉なことであります。皆様の活躍をご期待申し上げます。
　
さて、話は変わりまして、今月の12日に建築家の黒川紀章が亡くなりました。享年74歳でした。私がまだ学生の頃、彼はすでに新進気鋭の建築家として活躍する有名人であり、建築を学ぶ学生にとって、憧れの建築家の1人でありました。彼は、国内はもとより海外においても多くの有名建築の設計を手掛け、数々の賞を受賞し、輝かしい功績を持った国際的な建築家でありますが、その黒川紀章が、1981年に開港した「とかち帯広空港」の設計者であることは、地元では承知している人も多いかと思いますが、全国的にはほとんど知られていません。数ある彼の作品集において、「とかち帯広空港」の写真若しくは活字をみることは、残念ながらほとんどありません。「とかち帯広空港」のデザインは、当初の設計図では、飛行機の翼か、あるいは鳥が羽を広げたようなイメージだったそうですが、開港した時点では、その一部が完成しただけですから、イメージとはほど遠い状態です。黒川紀章にしてみれば不本意だったのではないでしょうか。「とかち帯広空港」は、何年か前に増築して、片側の翼らしき部分が完成しました。将来の増築で両翼が完成し、黒川がイメージしたデザインの完成した形が見られることが楽しみであります。
　
2年後の1983年、黒川紀章はテレビ番組の共演をきっかけに女優の若尾文子と再婚しました。彼の口説き文句が「君の美しさはバロックだ」という話は有名であります。なんとキザでカッコいい言葉ではないでしょうか。彼一流のセンスとパフォーマンスは、今年4月の都知事選においても、ご覧のとおり十二分に発揮されました。遊説にヘリコプターとクルーザーを使った派手なパフォーマンス、さらに自らデザインしたガラス張りのサロンのような選挙カーで、女優若尾文子とツーショットで遊説などですが、最後まで貫いた彼独特の男の美学に拍手を送りたいと思います。彼が、都知事選に出馬したのは、功なり財を成した者が新たな野心で、政治家を目指したのではなく、あくまで建築家として、また都市計画家として自分のいだいていた理論と哲学の、新たな実践の場として政治の世界を選んだことがその動機であるとある評論家が述べています。私は、その解釈に賛成であります。最期までプロフェッショナルな信念を貫いた彼の生き方に感銘を覚えるとともに、ご冥福をお祈り致します。合掌